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学生1万9000人が使う“PCルーム”を全廃する九州大 その狙いとは?

学生が個人のPCやタブレットで学内システムにアクセスし、いつでもどこでも自分のペースで自由に学習できるようにする――そんな先進的なICT教育に取り組む大学が現れつつある。
中でも、国立総合大学としては異例の取り組みでこれを推進しているのが九州大学だ。

同大は2013年度新入生から、学生が個人で所有しているノートPCの学内持ち込みを必須化。
2017年度にはこの制度を全学生1万9000人(大学院生含む)まで広げ、学内のPCルームを全廃する計画だ。

今後は個人PCによって“1人1台PC”の体制を確立し、オンライン教材を使った授業やWeb学習システムの活用を進めていくという。
取り組みの背景と狙いについて、プロジェクトを主導している九州大の藤村直美教授(工学博士 総長特別補佐 副CIO 情報統括本部長 教材開発センター長)に聞いた。

●学内PCだけでは「とても足りない」

現代の大学教育ではPCが欠かせない。
学部を問わずレポート作成などに利用するほか、理系学部などでは専用ソフトウェアを使って課題を進めるケースもある。
だが藤村教授によれば、大学が用意するPCだけでこれらの用途を全てカバーするのは難しくなっているという。

本学では学生用のPCを設置した講義室を12部屋ほど整備してきたが、時間割の8割ほどが授業時間で埋まっていて、学生が授業時間外に使おうと思ってもほとんど使えなかった。
なぜなら学生は1万9000人ほどいるのに、学生向けPCは大学全体で約1000台しかない。
これではとても足りなかった。

オンライン教材などを使って先進的な教育を行いたくても「大学全体の予算は減らされる一方で、これ以上PC整備に使える予算を増やせる見込みもない」――こうした課題を解決すべく、同大は個人PC持ち込みに向けたプロジェクトをスタートする。

●「PCを買えない学生はどうする」――学内で反対意見も

同大が学生の個人PC持ち込みにつながる取り組みをスタートしたのは2006年のこと。
まずウイルス対策ソフトのライセンスを大学で一括購入し、学生が個人PCに実質無償でインストールできるようにした。
また2007年には日本マイクロソフトと包括契約を結び、学生が最新版のWindowsとMicrosoft Officeを個人PCに無償インストールできるようにした。

こうして同大は個人PCを学内で使いやすい環境を整備してきたものの、藤村教授はこれだけでは不十分だと感じていたという。
クラスに1人でもPCを持ってこない学生がいると、全員がPCを使えるという前提で教育を行えない。
やるからには必携化までちゃんとやるべき。
中途半端では意味がない。

さらに新入生向けアンケートで「95%の学生はPCを持っている」という結果が出たことから、同大は個人PC必携化に向けた構想をスタート。
一方、当初はこの案に学内で反対する声もあったという。

お金がなくてPCを買えない学生はどうするのか、電源コンセントはどうするのかとか、そういう意見はたくさん出た。
しかし、ノートPCはいまや5万円ほどから買えるし、バッテリーだって5~6時間は持つ。
どうしても電池が切れてしまうようなら講義室のコンセントの近くの席に座ればいい。
こうして16部局を回って説明して理解を得ることができた(藤村教授)

教育分野ごとに異なるPCへの要求スペックについては「学科ごとに推奨PCを指定してもらうことでクリアしていった」という。
例えば、藤村教授が所属する学科ではMacbook Air、その他の学科ではWindows 7/8など――と、OSや端末種別から異なる機種を学科ごとに選べるようにしている。
なおMacでは、前述のWindowsをインストール(Boot Camp)すればデュアルOSで使えるようになっている。

●いざ運用スタート PC関連トラブルは「例年より減った」

2013年3月には学内の無線LAN環境を刷新し、「授業を行うほぼ全ての教室」で下り約130Mbpsの高速インターネットを利用できるようにしたほか、学内ネットワークにファイアウォール製品(パロアルトネットワークス製)を導入。
危険なアプリケーションの利用を遮断する環境を整えた上で、2013年度の新入生から個人PCの必携化をスタートした。

PC必携化当初はトラブル増加を懸念していたが、結果的に学生からの問い合わせは例年より大幅に減ったという。
最初に全新入生向けに講習会を行い、しっかりとPCの使い方をレクチャーしたのが効いた。
これまではちゃんと教えられていなかったので個別の問い合わせが多かったが、今回は全学生を最初に面倒をみたので、ほとんどトラブルがなくなったと藤村教授は振り返る。

トラブル減少以外の効果も生まれているようだ。
例えば、学内PCに皆で一斉にログインさせると授業開始が遅くなるが、個人のノートPCなら普段通りパスワードを入れるだけですっと使える。
データの保存場所も従来の教育情報システムでは1人当たり100Mバイトしかなかったが、自分のPCなので何十Gバイトでも保存できる。
われわれが抱えていた課題をほとんど解消できた。

●教材は「極力オンライン化を進めていく」

同大では2012年に「教材開発センター」を設置し、各学科で使う教材のオンライン化を進めている。
現時点ではオンライン教材の利用状況は授業によってさまざまだが、「今後PCを使って授業をする教員は基本的にオンライン教材を使うことになるだろう」と藤村教授は見込む。

実際、藤村教授が担当している「情報処理演習」では2013年度から個人PCとオンライン教材による授業を行っており、これまでの1年で「問題が起きたことは1度もない」という。
今後は教材開発センターを通じ、他の科目の教材も「極力オンライン化を進めていく」方針だ。

オンライン教材は当然PCがないと使えないが、同大ではPCを持たない学生への貸し出しなどは行わない方針。
学校に教科書を持ってこない学生が自ら損をするのと同じ。
貸し出し用のPCも準備しているが、持ってきたPCが故障してしまった学生にしか貸さない。
大学としてやれることはやるが、PCを買わない、持ってこない学生に対して過保護にする必要はないと考えている。

●PC関連コストを抑制し、サービスを強化していく

同大は一連の取り組みを通じ、学内PCの調達・保守にかかっていたコストの削減を見込む。
また、学生向けにウイルス対策ソフトとWindows、Microsoft Officeを一括契約したことで、これらを個別に購入するのと比べて「これまでで実質40億円ほど支出を抑えられている」と藤村教授は話す。

PCを減らすことで浮いた予算をもとに、今後は学生向けサービスを充実させていく方針だ。
PCのように学生個人で賄える部分に投資しない代わりに、例えばWeb学習システムや学習管理システムといったサーバ側のシステムに投資していく。
そうした方向でサービスを強化していきたい(藤村教授)

国立大学としてちゃんと教育環境をよくして生き残ろうと思ったらこれくらいのことはやらないといけない。
他に選択肢はないと思う――九州大は今後も1人1台の個人PCを通じ、高度なICT教育を推進していく考えだ。

引用元はこちら

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